仙台箪笥は3つの職人技の結晶

仙台箪笥金具職人

飾り金具が生む華やぎ

漆の輝きの上に、華やかな表情をつくるのが飾り金具。金具のもととなる鉄の板に命を吹き込むかのように、躍動感あふれる龍や唐獅子、優美な牡丹や菊など、さまざまな文様を打ち出していくのが金具師の仕事です。箪笥をより堅牢に支えるため、一悼につく金具は小さなもの含め200個以上になることも。美しく立体的な金具は仙台箪笥の芸術の粋ともいえます。

仙台箪笥金具職人 八重樫榮吉
職人file ①
仙台箪笥金具職人

八重樫仙台タンス金具工房

仙台箪笥金具職人 八重樫榮吉

きっかけはですね、二十歳の時なんですけども、高校出てないのね。中学で。中学卒業した時に、学校からの紹介で仙台ホテルのレストランに勤めたことがあるんです。2ヶ所くらい変わったこともあったんだけども、仙台ホテルが改装で3日間くらいお休みの時があったんです。その時に家に戻って、きっかけになった。家は9人兄弟で末っ子なんです。自分の家の職業はちょっと分からなかったんだけども、ていうのは作業場に入れてもらえなくて。それで、3日のお休みの時に、親父から「この仕事向いてるからやってみないか」って言われたんです。その時あんまり本気にしなかったの。でもまた言うんです。それがきっかけです。もしあのまま言われなかったら、(家に)戻らなかった。大体2ヵ月くらい経ってから辞めて、この仕事に。今思うと、(当時担当していた)皿洗いの仕事がプラスになったんだね。上下関係がしっかりしてて、家に帰って(この仕事を始めた)時もあまり苦労っていうのは感じなかった。始めて1年くらい経った時、親父に褒められたんだよね。それが影響したと思う。昔の職人からしたら褒められるってことが無いから。それで(この仕事をやってて)楽しくなってきたんだね。だから東京に戻るって考えが全然無かった。だから途中で独立しようって考えは強かった。だけどちょっと事情あって、それが出来なかったんだよね。
昔と違って、今独立してからは、自分の印を必ず入れてる。だから手を抜くってことはしない。金銭的に大変なの。ここで辞めれば良いんだけども、それが私出来ない。名前入れてるってのがかえって良かったかもしれない。7人兄弟で、5人が男、内4人が金具屋なんですよ。考えてみたら4人の兄弟に同じ仕事をさせるって、今じゃちょっと考えられない。
仕事やってて、ライバルなんですよ。兄貴もライバル。
今は弟子取りたいって思いが強いね。だけども、今はちょっと金銭的に払えない。正直それがちょっと辛いですね。(略)
道具って全部売ってなくて、自分で用意するんです。そうすると、今度はこっちが仕事出来なくなって、依頼が入ってこなくなってしまう。そいつが一番の欠点。
親父からは一人前になるまで10年くらいかかるって言われてて、俺は12年かかった。こういう同じ簡単なものを作っていくならいいけど、うちの場合は全部注文だから、断る訳にはいかないんだ。職人だからさ、出来ませんって言えない。
今の欠点はさ、職人になりたいって言って一人前になっても続けずに辞める人が多いの。
教える方も教えられる方も大変。